ブラックジャック

 
ブラックジャックの人情話ばっかり集めてませんか?という感じのTV版は一体どうやって楽しめばいいんだろうと。それでも今回はけっこう纏まった話「偽りのウェディング」。


「私癌なんでしょ?」「あと2、3週間、長くて1ヶ月・・」「そう、わりと無いのね・・」「でもミチルさん最後まで希望を捨てないで」「希望?私の希望は何かしらね?」・・・


「結婚したい、何か幸せな体験をしてみたいの」と両親に言うミチル。病室に一番に入ってきた男と結婚すると言う。で、両親は幼馴染の久磨を呼ぶが、先に病室に入ったのはブラックジャック。結婚するというミチルに馬鹿げてると考えるブラックジャックだが、ミチルの看護をしている女医は反論する。
「あの子、自分の生きる希望を結婚に託そうとしているのじゃないでしょうか?」


納得したのか結婚込みの手術をする事にしたブラックジャック。結婚の誓いの後に手術をする。



希望をキーワードに生きようとするミチルを描けていたというか、短い話の中で適切に話の要素を選んで表現するのって難しいわけで、そういう意味でうまいのかもとか思った。今風に作るならもっとミチルの過去を描いたりキャラを掘り下げて病室に一番に入ってきた男と結婚するとまで言ってしまうまでの心情描写に1話は掛けたいような気もするけど、それは脳内補完する所なのかな?もしかしてブラックジャックは名作だって言ってる人は脳内補完してるから名作と考えているのだろうか?だとしたら敬服するわけですが。


ちなみに、術後、ブラックジャックはミチルが結婚したと言って聞かないのを突っぱねて、結局ミチルと久磨が結婚します。久磨、活躍も特に無かったくせに結婚ですか?(これも2話構成なら久磨のエピソードも作れたんでしょうけどね。)



 そんなこんなでこの手塚治大先生の傑作とか呼ばれているブラックジャックについて・・・。正直この作品の面白さってよく分からない・・・。医者漫画の先駆けって偉業は分かるんだけど、内容自体は人情漫画だよなぁ・・。高報酬を取るはぐれ職人系漫画ならその後「ザ・シェフ」とか出てて、そっちも人情漫画してるけど、私的には人情漫画としては「ザ・シェフ」の方が数倍優れてると思います。料理と人情は相性がいいと思うんです。「この料理は昔ママンが作ってくれたね・・。くすん」とか人の思い出に結びつけるの楽だもの。
「このクロイツフェルト・ヤコプ病はその昔・・・」ってなかなかつなげらんないもん。生き死にの問題はちょっと大事になり過ぎちゃって、人情とか細かい事言ってらんない。

 「ブラックジャック」の半分以上を占めるのが人情漫画だと思うけど、手塚治が描く人情漫画はつまらない気がする。あの人はストーリーは描けるけどキャラとか心情描写は描けないか、描かない人じゃないかなぁ?「アドルフに告ぐ」とか「キリヒト賛歌」なんてこんなすごいストーリーよく描けるなとか思うけど、キャラの描写は軽いと思う。話の展開が速くて、殆どあらすじに近いし。


 とはいえ、全部がつまらない訳でもなくて、ピノコの誕生シーンとか非現実な話とかはかなり面白い。人間の体の中でもう一つの体が育ってしまうという畸形嚢腫からもう一人の人間を取り出すなんて随分面白いことを考えたなぁと。あとはブラックジャックが「人に蔑まれる様な人間になるなよ」とか自嘲する話や、医師免許が取れるという話を持ちかけられて喜ぶブラックジャックだったがそれも束の間・・とかいう回があったと思います。実はブラックジャックは人に認められない事に負い目を感じてるようなのですが、アウトローな医者の苦しみを描いてる回はけっこういい感じかも。つか人情話を全部削ったら面白いような気も・・。


 唯でさえ時代が古いアニメで派手さが無いんだから、アニメ版はインパクトのある話ばっかり集めてやればいいのになぁ・・・・・・。