第一話

「大変!お茶漬けちゃん!」

普段はとても冷静なしおこぶちゃんが滑り込みをかけながら教室のドアを開けて涙ながらにお茶漬けちゃんを呼ぶ。

「小梅ちゃんが!小梅ちゃんが・・・、うめこぶちゃん達にさらわれたの!」
「な・・・なんてこと!小梅ちゃん!」

浅漬け中学1年生のお茶漬けちゃんのライバルのうめこぶちゃんに親友の小梅ちゃんがさらわれたらしい。お茶漬けちゃんはしおこぶちゃんと入れ替わりに教室を出て行く。しおこぶちゃんは出て行くお茶漬けちゃんを見送り、一人でつぶやく。

「うめこぶちゃんは・・本当に運命を変えるの?」

所変わってここは学校の裏庭。小梅ちゃんは黒服の男達に囲まれ、腕は縛られている。
「うめこぶちゃん、今日はやけに力が入ってるんですね!いつもはこんな大人達の力なんて借りないじゃないですか!」

「・・・」
「何か言ったらどうです!!」

さっきから黙りこくっていたうめこぶちゃんは重い口を開いた。

「今日は・・いつもとは違うのよ!今日こそは私の悲願を遂げる日になるの!」
「・・・」
「そう・・・母さんを・・」

小梅ちゃんはそれを聞くと目を伏せた。
(今日・・やはり今日するつもりなのね。でも、それになぜお茶漬けちゃんを呼ぶ必要があるの?)

 お茶漬けちゃんはダダダダ!っと音を立てて裏庭に突っ走っている。しおこぶちゃんは場所を告げなかったが大丈夫。いつでも対決は裏庭に決まっているのだ。それはうめこぶちゃんが場所をころころ変えるのがめんどくさいからだと容易に推測できる。うめこぶちゃんはそういう人間なのだ。

裏庭の廃校舎の一番上に人影を見つけると大声で叫んだ

「うめこぶちゃん!」
「よく来たわっ、お茶漬けちゃん!待ちわびてたわ・・・あなたを倒すこの日をね!」

小梅ちゃんはお茶漬けちゃんが来たのを見て、前々よりこの日の為に用意していた「アレ」を使う事を決めた。

「お茶漬けちゃん!」
「小梅ちゃん!」
「お茶漬けちゃん!変身よっ!」
「うん、変・・・身!」
「何い!?」

お茶漬けちゃんは小梅ちゃんから誕生日のプレゼントとしてもらった緑色のリボンの不思議な科学力で変身する事ができる!
手を高く上げて「変・・・身!」と叫ぶのが合図だ!!

からだの周りが不思議な光を出し始めた。

うめこぶちゃんは予想外の展開に狼狽していた。
(今までこんなのは見たこと無い・・一体、何が始まるんだ!?)

「お茶漬けの素!」

と叫んだかと思うと遠くから飛んできた「○谷園」のあのパッケージがすっぽりとお茶漬けちゃんを包んだ。どうやらこれで変身完了らしい。

(かぶるだけ・・・!!!!)

「こらーっ!」

あんまりにもあんまりな展開にうめこぶちゃんは廃校舎の壁を駆け下りてお茶漬けちゃんにツッコミを入れる。

「ただの着ぐるみじゃないかーっ!」

しかし、廃校舎の上から自信たっぷりの小梅ちゃんの声が聞こえてくる。

「甘いです!じ!つ!に!甘いですわ!!見せてあげて!お茶漬けちゃん!」
「ちゃ!!(茶)」

お茶漬けちゃんはキャラ作りなのか、訳の分からない掛け声を返すとうめこぶちゃんの方に歩を進める・・・
・・・のだがただでさえ動きにくいお茶漬けの素の着ぐるみをしているので足元にあった石につまづき、またしても変な掛け声とともに見事に前のめりに倒れる。

「ちゃちゃあ!?」

お茶漬けの素スーツは平べったい。一度倒れてしまうと、お茶漬けちゃんがどうあがこうにも立ち上がる事は出来なかった。

 一時、盛り上がりを見せていた裏庭の「盛り上がり」とやらは、一陣のそよ風に流されていった。